「チエちゃんと私」よしもとばなな|感想文

   

ずーっと、「趣味」カテゴリーを作るか迷っていたのですが、作ってみました。
わたしの趣味は、読書、映画鑑賞、アートです。なんか文にして並べてみるととっても知的そうなイメージがありますが、わたしは全く知的派ではありません。ははは。

その一つ、読書についてちょっと書こうと思います。
日本にいる時は、本は図書館で借りまくっていたので予算もきにせず、好きなだけ読書の世界に浸っていました。
でもここタイではそうもいきません。日本語図書館はあるし、実際に利用もしていましたが、品数は少ないんですよね・・・。なので本はもっぱらプロンポンあたりにある、日本語書籍の古本屋へ行ってセール棚を漁るか、Kindleで購入するかの二択になりました。日本語書籍を扱う紀伊国屋書店も行きますが、何せタイに輸入しているので、その分税金がかかり割高になります。なので、どーうしても読みたい本は買いますが、めったに利用することはないですね。

日本では読書はタダで楽しめる、わたしの最大の娯楽だったのに、タイでは贅沢な趣味となってしまったわけです。
なので、読むのは遅い方ですが、さらにちびちびと、ゆーっくり読むようになりました。読みたい気持ちを抑えて読書しない期間を作ったり。でないと大変なことになってしまいますからね、とほほー。

さて、そんな読書環境の中で最近Kindleで購入して読んだ本の感想を書きたいと思います。

 

チエちゃんと私 (文春文庫)

「チエちゃんと私」よしもとばなな

私がよしもとばななの本を初めて読んだのは中学生?高校生?くらいだったかなぁ。「つぐみ」「キッチン」を読みました。はっきり言ってどんな内容か全く覚えていないし、その頃の私には心に響かなかったんですよね。それ以降全くよしもとばななの本を読んでいませんでした。
でもなぜかふと、そうだ、よしもとばななの本が読みたい!と思って選んだのがこの「チエちゃんと私」です。

わたしは20代前半から後半、アジア雑貨屋で店長をしていました。小ぢんまりとしたお店で、店長といえども、仕入れから販売まで全てをやっていました。タイに買い付けに来て、値段つけ、ディスプレイ、販売と、全てのステップで自分が関わることができたので、今までで一番やりがいのあるとても充実した期間でした。

この本の主人公の私(カオリ・42歳・独身)も、裕福な叔母さんが開いたイタリア雑貨店で働いていて、イタリアに買い付けにいき、最終的には店長になって、お店のディスプレイや販売もしながら、日々やりがいを持って店で働いています。なんだか、主人公がかつて自分と同じような環境にいたのでやっぱりこの本を読む運命だったのかな、と思って少し驚きました。

カオリは若い頃、日本で知り合ったイタリア人の彼氏に会いにイタリアに短期留学をしたり、その後もイタリア語の翻訳や教師をしつつ、妻持ちのイタリア人男性と不倫したりと自由きままな暮らしをしていた。そんなカオリに対し、世間は厳しい目を向けていたが、カオリはそんなことは全く気にせず、

私は好きなことしかしなかっただけで、好きなことをするためにやるべきことはきちんと最小限やってきただけだ。そしていろいろなことを深くは考えないないようにしていた、それだけだった。

と、言い切れるとても気持ちの良い女性です。そんなカオリと、あることがきっかけで同居することになった親戚のチエちゃん(35歳・独身)。
チエちゃんもこれまた個性的で、オーストラリアのヒッピーだらけのコミューンで、自給自足暮らしをしていた、といった変わった人生の持ち主。
もう「おばさん」と呼ばれる年齢の二人が同居生活をしながらも、とても満たされた、幸福な毎日を淡々と送るというのが主なストーリー展開。淡々とした内容なので、きっとぴんと来ない人には、ぴんと来ない内容かもしれません。しかし、奥深い文章、内容がちりばめられていて、今の私にはガツーンと来る内容でした。

なんでもない毎日のように見える、でも少しずつ動き出している。兆しはそこここにあって、それがある日、花を開くように、雨が降り出すように、突然現れる。

二人は何の変哲もない暮らしをしているように見えるけれど、それでもすこしづつ環境が変化していきます。それをカオリは敏感に察知して、変わることへの恐さもあるけれど、受け入れていこうと、カオリ自身も変化していく様子が繊細に書かれています。

思い出があれば、チエちゃんと暮らした日々の悔いのない思い出があれば、きっとしばらくはつらいけれど、豊かさは消えないだろう。そう思えた。

この文章、とても印象に残りました。自分の人生を振り返ってみても、例えば、大好きだったアジア雑貨店で働いていた時、悔いなくやりきった感じで次の人生のステップへすすめたので、この時代のことは、今の私にとても豊かさをもたらしてくれています。あんなに楽しくって充実した時期を過ごせることはもう二度とないかもしれないけれど、そんな風に思える時期が自分にあったことはとても幸せなことで、思い出すたびに幸福な気持ちになります。

今の私の生活は、郊外ということもあり、引きこもりがちでなんの代わり映えもない毎日を過ごしているように思っていましたが、この小説を読んで改めて、「今と同じ」がずーっと続くってことはないんだ、と少し前向きになれた作品でした。

 

 

 

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